阿智村定例議会(令和7年9月4日)村長あいさつ
はじめに
お盆を過ぎ9月になっても暑い毎日が続いています。今年の夏は九州地方などでは大雨の被害もありましたが、南信州地域は安定して好天が続き、連日の猛暑により、熱中症患者の増、そして農作物では稲の生育も早く、例年より一足早い稲刈りの収穫の時期を迎えそうです。
8月31日には、震度5強の地震による災害が起きたと想定して、村内一斉に防災訓練を実施しました。各地域では全員の方に集まって頂き、安否確認や消火栓の出し方など経験してもらいました。近年集中したゲリラ豪雨などいつ災害が起きるかわかりません。村では災害時の万全の体制は取りますが、行政が万が一機能しなくなった時の自主防災組織のあり方や、具体的な動きなど是非、各自治会でも体制を整えて頂きたいと思っています。
国では参議院選挙が7月20日に行われ、阿智村では投票率66.85%という結果となり、3年前に比べて0.38%増、特に期日前投票者の率が増となりました。全体では、政権与党の自公連立が両議院とも過半数割れとなり国政は大変不安定な状況です。石破首相の動向も注目されており、今後の自民党総裁選の前倒しの議論もされており、混沌とした注目の秋となりそうです。村では投票所の見直しの要望も以前から出されており、住民アンケートや自治会の意見を聞き、原案を作成し、先日選挙管理委員会にも説明し概ね内諾を得ましたので、今後議会の皆様と協議を行い住民の皆さんに説明し、来年の村長選挙に向けて準備を進めています。
村の状況ついて
この9月議会では令和6年度の決算がまとまりましたので、議会中に認定をお願いするものであります。昨年は、依然として続く紛争等による物価高騰で、事業者や消費者への景気対策で事業を行ったり、人手不足対策として求人マッチングサイトの構築を行いました。20%プレミアムがつく支えましょう品券の発行や、事業者への電気ガス等のエネルギー価格高騰対策事業によって、この危機を少しでも乗り切って頂けたと思います。住民には5,000円分の福祉灯油等購入の助成事業を行いました。
組織的にはリニアまちづくり課を新設し、リニア新時代に向けたリニア中央新幹線工事への対応、わいわい公園や七久里、昼神温泉のまちづくりを中心に活動しました。インフラとしては、長塚橋等の橋梁工事や中関地区への宅地造成、子ども家庭センター設置の改修工事、阿智荘のネットワーク改修工事などさせて頂きました。
そして、公共交通の関係では70歳以上を公共バスの無料化、教育関係では学校のあり方検討委員会の設置、オーストラリアへの海外語学研修の実施、若者定住対策の空き家解体補助金では好評で10件の物件が対象となり、更地の新たな可能性に期待したい所です。
基金は令和5年度末が68億3,123万円、6年度末が66億2,118万円、借金を表す村債が令和5年度末が26億6,193万円、6年度末が25億1,170万円であり、財政の健全化を見る指標については、経常収支比率は82.9%、実質公債費比率は、2月2日%となっています。基金は約2億の減少ですが、債務は約1億5千万減少しており、今のところ健全な状況が維持できています。
しかし少子高齢化により税収の減、社会保障費の増など全国共通の悩みをかかえていますので、将来を見据え安定した村政が運営できるよう精進して参るつもりです。
さて、この夏には様々な出来事がございました。
シンガポール・マレーシア海外語学研修等
事前準備から始まり約3か月間の学習を重ねて参りましたシンガポール・マレーシア海外語学研修は7月31日に出発し、8月4日までの4泊5日の日程で、中学生から高校生までの22名が参加し無事行って参りました。セントレア空港を出発しシンガポールへは6時間半の長旅でしたが、皆元気で多くの方との交流、見るもの体験するもの全てが参加した子供たちのこれからの人生の糧となる事と思います。帰国して勉強してきた事をまとめ、報告書の作成が予定されていますので又楽しみにしたいと思います。
又、教育委員会主催による学校のあり方検討委員会を随時開催頂き、3月の中間答申から約半年議論も進んでいます。今後最終答申に向けた意見交換会を各地区で9月から10月にかけて開催される予定ですので、多くの方にご参加頂ければと思います。
夏まつり
恒例の夏まつりは7月26日に大煙火大会を開催しました。お陰様で晴天に恵まれ、本当に多くの皆さんに花火を見て頂くことができました。昔からの恒例の打ち上げ場所が河川敷では出来なくなった為、全て城山からの打ち上げや、昨年に続いて開会式を、駒場自治会館前にて一体感のある集約した演出、火まつり、松明みこし、音響の工夫などさせて頂きました。多くの皆さんに楽しんで頂けたのも御寄付頂いた多くの企業や村民の皆様、そして関係者の皆様のご尽力の賜物と感謝致します。お盆の14日には浪合でも大煙火大会、昼神では数日間に亘って盆踊り等の夏祭り、各地域でも、夏の行事が盛大に行われ帰省客の皆さんと楽しいひと時を過ごされたようであります。
熊谷元一写真「世界の記憶」への取組み
8月23日には名誉村民、熊谷元一さんの写真をユネスコ「世界の記憶」に登録することをめざしてキックオフシンポジウムを開催しました。5月に発足した熊谷元一写真世界の記憶推進委員会と熊谷元一写真保存活用委員会が会議を重ね、世界の記憶への登録を提唱頂いた、静岡大学矢野教授をはじめとする専門家の先生に参加頂きながら準備を進めてきました。当日は実際に10年前に所蔵する資料が「世界の記憶」に登録された舞鶴引揚記念館の山下さんの記念講演などにより、この登録はどういったものか、地域はどう変わるか、メリットや必要となる要素などを学習する事ができました。熊谷さんが同じ場所で、戦後移り変わる時代を、人々の生活、行事、風景を撮り続けた事が、時代の変遷の様子、平和へのメッセージとなることは奥深い意義があります。これから申請に向けて、行政や住民が一体となって取り組んでいく事が大切と感じました。
南信州フォレストパーク
3年前から始まった、阿智・平谷・根羽の西部3村のコンセプト、森と自然の恵み、南信州フォレストパークの事業、農産物の道の駅や無人販売デジタルスタンプラリーを開催し、阿智村で9か所、平谷村で3か所、根羽村で3か所の計15か所、うち6か所の無人販売が点在し、いつでも美味しい野菜が手に入るしくみ、ドライブするきっかけ作りなど、新しい試みも始まりました。販売所は地元材で作られていますので、木のぬくもりも味わいながら楽しんで頂ければと思います。8月9日から始まったこの事業は、現在1か所につき約50人の方がこの企画に参加し、のべ750人の方が各地を周って頂いています。このうち約4割が中京方面の方です。この夏も西部地区の標高の高い所で育った「とうもろこし」は甘く大人気でした。
民生関係
皆さんに健康で過ごして頂くために、いきいき健康大学をこの5月より毎月開催しています。村内6会場で計80名の参加があり、先日の8月4日の診療所、羽生先生の終活の全体講座では45名の参加があり、多くの方に健康の大切さなどお話を聞いて頂いています。その他にも各地域での健康常会も好評であります。保健師と包括支援センターでは、心と身体の健康のために、健康テレビを作成し、5月から番組を放映しています。今年度も全国と比較して男女共に死亡率が高い「脳血管疾患」や「筋骨格系疾患」をテーマにその予防策や対応策など、年間を通して配信していきます。是非多くの皆さんにご覧いただきたいと思います。
リニア中央新幹線
清内路地区の振興のため発生土の有効活用に数か所の候補地を見つけ、只今調査、工事等が進んでいます。旧清内路振興室跡地では解体工事が終了し、発生土を利用した造成工事に取り掛かっています。終了後、若者定住住宅の建設に取り掛かる予定です。そして、以前から埋め立ての候補地のクララ沢や坊主ケ島の調査や地権者の交渉がされています。村道1-20号線の改良工事と併せ、スピーディーに安心安全に工事が進むよう自治会の皆さんや、村のリニア対策委員会では、度重なる話し合いの中で、協定書や確認書等の締結、見直しを行っています。迂回路工事に伴うジビエ加工施設の移転工事も急ピッチで進められ、9月より稼働できる事となりました。
発生土を活用した七久里地区の開発につきましては、地質環境調査が完了し、現在地元説明ができるよう計画の検討を行っており、間もなく概要を、地元の皆様へ説明できる段階になっています。
観光関係
7月から昼神温泉を中心に七夕まつりが始まり、梅雨時の観光施策にと昨年からスタートしました。今年の竹あかりは竹林整備の環境保全を第一目的に、プロのデザイナーのアドバイスも頂き、阿智神社や昼神温泉の恩出橋をメインに村の中を彩り、多くの住民や観光客の皆さんに親しんでもらいました。各旅館の七夕プランの企画など、夏休みからお盆の盛況に繋がる企画ができました。8月1日からヘブンスそのはらでは音楽フェスが10日間行われ、星空ナイトツアーと多くの方にお越し頂きました。農業とも連携し、はなもものクラフトビール制作、阿智高校生の村の野菜を使った焼肉のたれ、浪合とうもろこしツアーなど大変盛況でありました。
上下水道関係
7月30日に上下水道施設整備審議会を発足し、9月3日に2回目を開催させて頂きました。正副会長の選出に続き、現在の上下水道及び合併処理浄化槽事業の概要や進捗状況を報告し、使用料金の改定について検討頂きました。この後審議会を何回か重ね、最終答申を頂く予定になっています。
要望活動
国や県に対して、7月は南信州広域連合や道路の期成同盟会として様々な要望活動も行って参りました。飯田南バイパスの要望も熱が入って参りましたし、国道153、256号線、県道の改良工事や治水対策など、設備ができて経年劣化しておりメンテナンスの重要性もあり、私たちの生活の安全のために、今後も引き続き要望をして参りたいと思います。園原インターのフル規格化も議会の要望と併せて働きかけていきたいと思います。
その他
こまんばマルシェや昆虫観察などの全村博事業、子どもが体を動かすきっかけ作りのチャレンジフェスティバル、小中学生の沖縄視察、高齢者のグラウンドゴルフ大会、戦没殉難者追悼式などこの夏も阿智村の住民の皆さんは、元気に活躍して頂きました。
そして、これから9月には全国から集まる生涯野球大会や、昨年の大河ドラマの余韻も含めははき木を題材にした演劇、題字を書かれた根本知さんの講演会、展示会などイベント行事が目白押しです。
上程議案
本議会においてご審議頂く案件は、人事案件1件、条例案件2件、締結案件1件、決算案件6件、予算案件2件、報告案件1件であります。
人事案件1件
阿智村教育長について、任期満了に伴う任命に関する同意をお願いしたい件になります。
条例案件2件
「阿智村個人番号の利用等に関する条例の一部を改正する条例の制定について」は、地方公共団体情報システムの標準化に伴い、住登外者宛名番号管理機能に実装するためであります。
「阿智村ジビエ加工施設設置条例の一部を改正する条例の制定について」は、リニア中央新幹線村道工事による、阿智村ジビエ加工施設の移転に伴い、施設の地番が変更になるものです。
締結案件1件
「清内路定住促進住宅建設工事」の入札結果による請負契約の締結をお願いするものです。
報告案件1件
支障木による損害があり、対物賠償額が確定しましたのでお願いするものであります。
決算案件6件
決算案件は、令和6年度阿智村一般会計及び各特別会計決算の承認を得るものであります。
一般会計決算は、歳入合計6,781,060,000円、歳出合計6,415,164,000円、歳入歳出差引額365,896,000円、翌年度への繰り越し財源112,667,000円を差し引いた実質残額は、253,229,000円となりました。
歳入についてみてみますと、村税836,009千円であり昨年より5月1日%の増、地方交付税は2,912,710千円と昨年より0.6%の増でありました。
歳出については、冒頭で述べた通りです。
特別会計の詳細については上程の都度詳しくご説明いたしますのでよろしくお願いいたします。
予算案件2件
予算案件は、一般、特別ともに補正予算についてであります。
一般会計補正予算第2号は、既定の歳入歳出予算に歳入歳出それぞれ905,601千円を追加し歳入歳出総額8,638,950千円とするものであります。
又、一時借入金の額を8憶円から10憶円にするものです。
歳出の主なもの
・コミュニティ館エレベーター改修工事・・・21,000千円
・まちづくり整備七久里環境保全委託料・・・20,075千円
・リニア対策事業費・・・654,400千円
・宿泊税システム改修補助・・・16,000千円
・えんばな厨房エアコン更新・・・1,270千円
・鳥獣捕獲報償費・・・12,535千円
・村道維持補修工事・・・25,000千円
・前年度繰越金の2分の1を財政調整基金に積立・・・52,000千円
特にリニア工事関連で、村道1-20号線等の改良工事や発生土置き場造成工事のために、予算を盛らせて頂きました。財源はJR東海の負担金となります。又宿泊税関係の広報や各旅館のシステム改修費を出させて頂く予定になっています。
特別会計についてはそれぞれ必要な補正を行います。
以上、ご審議いただく案件についてご説明いたしました。詳細については上程の都度詳しくご説明いたしますのでよろしくご審議賜りますようお願い申し上げます。
おわりに
さて、私事ですが来年2月に任期満了となる村長選挙につきまして、お話しさせて頂きます。私は平成26年2月に就任して以来、3期12年間、村の舵取りを担って参りました。
1期目は行政という組織の中での初めての経験ではありましたが、無我夢中の毎日であったような気がいたします。村民にわかりやすい行政情報の伝え方、明るく親切な対応を掲げ、「星ふるさと」や「阿智家族」といった言葉で伝えて参りました。天皇皇后両陛下ご来村の対応、阿智昼神観光局の立ち上げ、星の事業、定住施策促進など事業を展開して参りました。
2期目は第6次総合計画の策定が主な事業で、広く村民の方からアンケートや意見を聞きながら進め、住民が思っている事や村の課題がわかり、10年間の計画が策定され、智里西保育園やデイサービスひだまり、西部衛生施設改修等のインフラ整備も行ってきました。しかし、最後の1年半はコロナウィルス感染の猛威があり、その対応がほとんどの毎日でした。
3期目のスタートもしばらくはコロナの対応、世界紛争による物価高騰対策がメインの仕事でした。コロナは落ち着いてきましたが、日本中が全体に停滞感が否めず将来が不安な中で、これから急速な少子化対策や、リニアが来るまちづくりの計画も総仕上げに入ります。 3期では、まだ夢半ばであり、これから解決しなければならない課題もあります。何より、住民の命を守り、特に若い方が夢と希望を持てるような村づくり、若者が戻ってきたくなるような地域にする事が私の仕事です。住民の方と共に創り出す「共創」の精神で阿智家族の想いをさらに具体的に打ち出していかなくてはなりません。そのような状況の中で、次期村長選に挑戦させて頂きたく思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
これから、清内路では伝統の手作り花火や各地域でお祭りや敬老会、運動会と多くの皆さんが協力して楽しんで頂く機会が多かろうと思います。私もお伺いさせて頂いて村民の皆さんと直接お話ができる場でもあります。皆さんが集う中で村の将来の事を話す場でもあればよいかと思っています。今年も9月15日の敬老の日を中心に、百歳、米寿の方などにお祝いの訪問をさせて頂く事になっています。皆さんいつまでもお元気で、村の歴史や伝統、素晴らしさをしっかり私達に伝えていってもらいたいと願います。
以上本会議に上程いたします議案等について申し上げました。みなさんと共に住みたい地域、夢のある地域に向かって、いい村作りにまい進していきますようご尽力をお願いして9月定例議会のあいさつと致します。