阿智村定例議会(令和7年3月5日)村長あいさつ
はじめに
3月になり、駒場や昼神温泉を中心にひなまつり街道事業も始まり、卒業のシーズン、春の足音が一歩ずつ近づく季節となりました。 しかし今年の冬は特に清内路浪合で雪が多く、生活に支障をきたされた方も多くいらっしゃいましたし、除雪作業もフル回転し生活道路の確保をさせて頂きました。
国内では2月末の寒波により、大雪で被害に遭われるニュースが相次ぎました。又、岩手県の山火事は現在も続いており全国でも相次いでいます。国政では政権与党が過半数を割る中で、来年度の予算審議が難航している状況も続いています。そして世界ではアメリカ大統領の言動にも報道される中で、依然として続くロシアのウクライナへの侵攻など不安な状況も続いています。
3月議会では、第6次総合計画後期計画3年目となり、地区懇談会、各団体の懇談会、計画審議会等を昨秋から開催させて頂き、令和7年度の予算がまとまりましたので上程させて頂きたいと思います。
令和7年度重点施策について
令和7年度は特に日本中で、そして当村でも大変深刻な状況になっている少子化対策として、特に若者が夢と希望をもてる政策を打ち出して、わくわくするような地域になるよう、役場全体で横断的に取り組んでいきたいと考えていますのが以下の3点です。
1点目「若者未来in阿智」
子育て新時代の子供を中心とした政策、人口維持のために、さらなる戦略で定住に力を入れることを中心に展開して参ります。
そこで、まずは若者がふるさとへ帰ってくるきっかけとして、自宅から通い地元へ就業した方に最大35万円の「ふるさと就業祝い金」
の創設。個人や企業の方が賃貸住宅を建設される時の補助金として今まで一戸50万円だったものを100万円に増額します。清内路には
旧清内路振興室跡地に集合住宅建設や、春日地区での宅地分譲、中関団地の再開発に向けた動きを展開する予定です。
昨年から引き続き、定住促進支援金として若者が住宅を建った時には200万円、地元業者などの利用により最大で300万円の支援金が 受けられます。そして、空き家を解体する際に事業費の2分の1、最大で100万円の補助金により持ち主が空き家を解体するきっかけと
なるでしょうし、更地になれば新たな展開に期待できます。
そして、地元に就職した若者を対象としたふるさと奨学金返還支援事業は好評で、村でその返済分を半額負担する政策を引き続きPR
していきます。子育て支援、定住政策を前面にさらに専用ホームページなどで広告をしていくつもりです。これらの政策と併せ、住民
の方と共に人口維持につながるよう一丸となって取り組んでいきたいと考えます。
2点目「子育て新時代へ」
昨年から「こども家庭センター」を開設し、保健師等も配置し、妊産婦から18歳までの児童に関する相談やサービスを、ワンストップで対応していますので、引き続き力を入れますし、少子化に伴う将来の学校の望ましい姿を検討する「学校のあり方検討委員会」の2年目であり、7年度は最終答申が出ますので、その状況により、よりよい子供たちの教育のあり方の方向性を結論づけて参るつもりです。
3点目「まちづくり・リニア対応」
将来の阿智村の発展のため、若い世代のために未来への投資として、リニア発生土を活用した七久里地区開発事業には、希望を持って取り組み、長い間議論を展開してきました「わいwai公園周辺整備」では、7年度に詳細設計、一部工事に入る予定です。
リニア中央新幹線開業後の昼神温泉の姿を描く「昼神温泉リニア新時代構想」では、従来から行われてきた、箱物行政から脱却し、民間の資本、ノウハウを活用する手法を取り入れ、まちづくりの中心を担うまちづくり会社への出資、委託を行いながら、10年20年先のにぎわい創出、経済の循環を目指して参ります。
「くらし・いきがい・協働」
住民の方が幸せに暮らす事ができるように、健全な財政運営と主要計画の住宅施策と地域力を高めるために、力を入れて参ります。健全な財政運営では、当村では2月に1億円を突破した、ふるさと納税のさらなる拡充の取り組みと、観光への目的税となりますが「宿泊税」の条例を6月議会をめどに提出、運用を令和8年6月を目標にしたいと思っています。阿智村では昼神温泉リニア新時代構想のための財源を中心にしたいと考えています。
又、名誉村民熊谷元一氏の写真をユネスコの「世界の記憶」に登録推進できるように、検討委員会を立ち上げ、研究して参ります。他、集落維持支援事業では集会所の解体補助を新設、住民の負担を軽減する事業を行います。
主な事業と予算
・ふるさと就業祝い金事業 500万円
・賃貸住宅建設支援事業 400万円
・定住促進のための住宅新増改築等支援金 2,600万円
・分譲住宅造成事業 2,850万円
・空き家等解体事業補助 1,000万円
・清内路村営住宅建設事業 20,300万円
・ふるさと納税による寄付金増額事業 5,000万円
・世界の記憶推進事業 83万円
「教育・文化・地域愛」
子供達が阿智村を愛し、進学や就職で離れることがあっても、いつかはふるさとに帰って来てくれる為、教育は大切であります。昨年からの「こども家庭センター」の開設により子育て施策の充実した体制となり、保健師や心理士、こども家庭相談員の配置による、一体的できめ細やかな相談支援を行います。
学校では小学校専科指導教員の導入により、さらに専門性のある教育、そして、給食には食材の高騰による保護者の負担を軽減するために牛乳代の全額補助を行います。又空調設備やLED、洋式トイレ、Ict機器の教育環境の整備を行います。中学では国の指針によりチャレンジゆう「あち」が受け皿となり、休日部活動の地域移行支援を行います。又、今回の海外語学研修事業はシンガポール・マレーシア方面で行い子供たちにかけがえのない体験をしてもらう予定です。公民館では、中央公民館や体育施設の予約がどこからでもできるようにネットでのシステムをこの3月から導入し、スタートしました。
主な事業と予算
・地域子育て支援拠点事業 4,891万円
・学校教育施設整備事業 3,107万円
・専科指導教員配置 879万円
・海外語学研修事業 950万円
・学校給食牛乳代金の全額補助等 1,390万円
・中央公民館等予約システム運用事業 64万円
・休日部活動地域移行委託事業 123万円
「福祉・健康・医療」
今後見込まれる高齢者の増加と、少子化による生産年齢層の減少により、介護保険や医療保険への負担が大きくなることが見込まれます。最近の統計によると、阿智村では三大疾病として「脳卒中」「認知症」「筋骨格系疾患」というデータが出ました。その対策として塩分ひかえめの運動や、あち健康テレビの放映、回想法を取り入れた健康づくりを展開していきます。
トリプルAサポート事業の継続、特定健診等の受診勧奨の強化、フレイル予防のため、おおむね60歳代からを対象にした「いきいき健康大学」を引き続き開催します。又、社会参加支援事業として、不登校やひきこもり状態にある方に対し、居場所支援や相談支援を行います。
母子保健事業では不妊不育専門相談員による相談事業や乳幼児健診、感染症対策事業では引き続き帯状疱疹や肺炎球菌ワクチン予防接種補助を行います。
主な事業と予算
・診療所の運営 4,940万円
・地域包括支援センター事業 6,113万円
・社会参加支援事業 795万円
・福祉施設等の整備 2,271万円
・各種健診事業等の実施 1,581万円
・母子保健事業 3,954万円
「産業振興・雇用創出」
若者が希望を持つ大きな期待に、産業の発展、働く場の確保であります。観光を基軸とした商工業や農林業と産業連携が具体的に進みつつある中、経済が活性化しこの村が潤い、定住人口につなげていきたいと思っています。阿智昼神観光局や産業振興公社、商工会やJA、それぞれがうまくかみ合い相乗効果で村の発展につなげていきたいと考えます。その中で共通の課題は、人材不足、雇用の確保であり、昨年から始めた「求人マッチングサイト」は手数料など見直しをしながら、引き続き事業を推進します。
又、物価高騰、エネルギー高騰対策として、全業種の皆さんに補助金を支給します。農業関係では、有機活用農業の推進として、中心的な施設、堆肥センターの屋根改修工事や機械の更新を行います。そして農業用ハウスや機械の修繕等の農業経営持続化支援事業や肥料農薬の高騰などの様々な補助金で、安定した農業経営を望みます。森林整備事業にも積極的に、森林税等を有効に活用し、森林経営管理制度による森林整備や路網整備、支障木伐採を進めます。そして観光では、新たな星のコンテンツとして、昨年から始めた「七夕まつり」を積極的に展開します。商工会との連携では、住宅リフォームやプレミアム商品券などの消費活性化事業を実施して参ります。
主な事業と予算
・観光事業の補助金 11,777万円
・スタービレッジ事業 2,500万円
・昼神温泉将来構想推進事業 2,897万円
・運動公園周辺整備計画・着工 39,949万円
・産業振興公社事業 4,800万円
・堆肥センター屋根改修、機械更新 7,848万円
・森林整備事業 3,512万円
・公式求人マッチングサイト事業 143万円
・エネルギー価格高騰対策補助金 2,000万円
・肥料農薬価格高騰緊急支援事業補助金 1,000万円
「環境・防災・安心」
私達が安心して暮らすために、大変重要な位置づけであり、近年頻繁に起こっている災害に対する自助共助の防災の意識を高めます。能登半島で地震があった教訓から防災備品設備の充実をはかり、木造住宅の耐震工事補助を拡充します。又環境面では美しい景観の保全の創出として、環境条例「区域施策編」の取り組みや、浪合を中心に星空保護特区制定の研究を行っていきます。西部3村で構成する南信州フォレストパークの事業は引き続き推進していきます。燃やすごみの削減や観光地にふさわしい美しい村づくりの意識付けをして参りたいと思います。
そして、道路等の整備では、緊急を要するものや、各地域から要望の出ているものから整備して参りたいと思っています。昨年の園原インター線の崩落で問題が浮き彫りになりましたので、園原インターのフル規格化も要望して参りたいと思っています。又公共交通では特に高校生のための駐輪場設置や、昨年から巡回バスを70歳以上の高齢者の方には無料で乗って頂くようにしましたが、好評につき引き続き多くの方に利用して頂くようPRしていきます。
主な事業と予算
・家庭ごみ等収集処理 12,875万円
・地球温暖化対策実行計画の策定 1,100万円
・村道林道の整備 5,800万円
・避難所用物品等購入 523万円
・木造住宅耐震診断、改修への補助 621万円
・村内巡回、乗り合いタクシーの運行 4,549万円
以上、令和7年度の主な事業です。新たな夢に向かった新規事業も多く組み入れさせて頂いている中で、繰り返しになりますが、若者に夢と希望が持てる、定住に向けた事業、まちづくり事業等に、重きを置いた予算となっています。「阿智家族」の精神で、住民が助け合い協力し合って乗り越え、阿智村の新たな輝きを刻んでいきたいと願っています。
議会審議
本議会でご審議いただく案件は、人事案件2件、条例案件7件、予算案件6件、その他案件6件であります。
条例案件他
刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整理に関する条例の制定について他、上程の都度説明させて頂きます。
予算案件
令和7年度阿智村一般会計及び各特別会計予算の議決をいただくものです。
(一般会計予算)
歳入歳出予算総額76億7百万円と過去最大規模であり、昨年度当初予算61億円と比較し、15億7百万円の増であります。
増額となった主な要因は、リニア対策事業で発生土置き場の造成や七久里開発事業の現地調査や設計委託を行うものとして、893,407千円のうちJR東海の負担が835,388千円、運動公園整備事業費399,491千円のうち合併特例債286,900千円をあて、清内路への村営住宅建設工事に203,000千円のうち過疎債152,200千円をあてる予定です。その他地方公共団体情報システムの標準化、共通化に対応した基幹システムの更新に106,806千円のうち国庫補助が81,725千円。堆肥センターの屋根や機械の更新で78,482千円などが大きな投資となります。
歳入については、村税で前年度より114,134千円増の828,809千円、地方交付税は前年度より210,000千円減の2,450,000千円となります。
基金繰り入れは、運動公園整備工事に地域振興基金から50,000千円、堆肥センター屋根改修や機械更新に、ふるさとづくり基金から、30,000千円など、前年度より102,573千円の増となり、繰り入れ総額は1,003,361千円となります。歳出については、先ほど主な事業について申し上げましたので、内容については「事業等計画書」を参考にしていただきたいと思います。
(特別会計)
阿智村国民健康保険事業特別会計は、事業勘定で歳入歳出総額542,900千円、直営診療所勘定で歳入歳出総額49,400千円
阿智村介護保険特別会計予算は、歳入歳出総額906,100千円
阿智村後期高齢者医療特別会計は、歳入歳出総額100,400千円
阿智村水道事業会計は、収入総額310,974千円
阿智村下水道事業会計は、収入総額593,246千円です。
この他、令和6年度各会計の補正予算等について追加日程でご審議いただくことになります。
以上、それぞれの議案について申し上げました。上程の都度詳しくご説明いたしますのでよろしくご審議賜りますようお願いいたします。
おわりに
2月16日に第2回目の昼神温泉村民dayが開催されました。昨年の50周年の企画として評判がよかったことから、昼神温泉の経営者会、青年部の皆さんが企画して頂きました。各旅館の無料入浴や、食事のサービス、とくさ大夫寸劇の上演、ロビーコンサートなど1日村民の皆さんに楽しんで頂きました。
村民の方が、昼神温泉を身近に感じ、温泉に入って昼神温泉の様子を、親戚や知り合いの皆さんに伝えて頂くことが最大の宣伝効果だと感じます。昼神温泉を愛して頂くことで、住民と共存共栄の温泉地になる事が、次の100年に向けての大切な点かと考えます。関係者の皆さん、ありがとうございました。
3月1日に阿智高校の卒業式に出席させて頂きました。65名の卒業生が新たな道へと旅立ちました。学校長の式辞の中で「神坂学習塾」の事が触れられました。西部3ヵ村で構成される阿智高校協力会が支援する「神坂学習塾」は今年で12年目を迎えます。毎年各学年20名前後の入塾者があり、希望する進学等に大きな成果を上げています。この学習塾と共に、観光、農業、福祉の地域政策コースもあり、生徒たちの充実した学校生活や進路に大きな成果がある事を報告させて頂きます。
そしてこれから3月には、小中学校の卒業式、卒園式など別れと出会いの季節となります。高校入試や、進学就職など新たな旅立ちで、一旦は阿智村を離れる若い皆さんもいることと思います。どんな形でもいいので、いつかはこの村を支える人に成長してもらいたいと願うばかりです。
そんな中で、リニアや三遠南信自動車道開通の明るい未来に期待を込めつつ、我が村が、輝く自治体として一人ひとりが元気と知恵を出して、素晴らしい阿智村をめざすために、多くの村民の方のご意見を頂きながら、令和7年度もどうぞよろしくお願いいたします。
以上3月定例議会の開会にあたり、ごあいさつ申し上げました。よろしくお願いいたします。